建設業法に違反した場合の罰則まとめ|懲役,罰金,過料が科せられる場合とは

「建設業法に違反してはいけないということはもちろん分かっているけれども,もしも違反してしまった場合,具体的にどのようなことをすればどのような罰則が科せられるのかはよく分からない」

このような疑問をお持ちになったことはないでしょうか。

この記事では,どのような行為が建設業法に違反するのかという違反行為,違反行為に対して科せられることとされている罰則,そしてそれらについての注意点をまとめています。この記事を読んで,建設業法の違反行為と罰則について知識を深めてみてください。

罰則の種類|懲役,罰金と過料の区別

建設業法違反に対して科せられる罰則には,懲役,罰金,過料の3種類があります。

懲役とは,ご存じのとおり,刑罰の一種で,懲役刑を科せられると自由を剥奪されて一定期間刑務所に入らなければなりません。

罰金とは,やはり刑罰の一種で,罪を犯したことに対して科せられる制裁として一定額の金銭を支払わなければなりません。

これらに対して,過料とは,行政上の罰の一種であり,行政上の法令に違反したことに対して科せられる制裁として一定額の金銭を支払わなければなりません。

過料は刑罰ではなく行政上の罰の一種であるという点で,刑罰である罰金とは区別されます。とはいっても,処分を受ける側からみれば実質的には罰金とさして変わらないため,罰金と過料の区別をあまり気にする必要はないでしょう。

罰則の対象|違反した本人だけでなく雇い主も

ある人が建設業法に違反する行為を行った場合には,違反行為を行ったその本人が罰則を科せられることとなります。

もっとも,罰則を受けるのは違反行為を行った本人だけに限られません。違反行為を行った人を雇っていた会社等の法人や雇用主である個人事業主もまた,違反行為を行った人とあわせて罰則を受けることとされているのです。

このような規定は,両罰規定といいます。違反行為の本人と,その人を雇っていた法人・個人事業主の両方が処罰の対象となるのです。

違反者を雇っていた会社等は,「従業員が個人的に違反行為を行ったのであるから会社にとっては関係がない」などと主張して処罰から逃れるということはできません。

このようなことから,雇い主である会社・個人事業主は,従業員がくれぐれも建設業法に違反した行為をしないように十分に注意しながら営業活動を行うことが大切であるということができます。

違反行為と罰則のまとめ

科される罰則ごとに違反行為を分類すると,次のようになります。

3年以下の懲役または300万円以下の罰金

  • 建設業許可を受けないでした無許可営業
  • 特定建設業許可を受けないでした下請契約の締結
  • 営業停止処分に違反して建設業を営業すること
  • 営業禁止処分に違反して建設業を営業すること
  • 虚偽または不正の事実により建設業の許可や許可の更新を受けたこと

3年以下の懲役または200万円以下の罰金

  • 登録経営状況分析機関への贈賄

6か月以下の懲役または100万円以下の罰金

  • 建設業の許可申請書や添付書類に虚偽記載をして提出したこと
  • 変更等の届出を提出しなかったこと,または虚偽記載をして提出したこと
  • 許可基準を満たさなくなった,または欠格事由に該当するようになったのに,その届出をしなかったこと

100万円以下の罰金

  • 主任技術者または監理技術者を置かなかったこと
  • 土木工事業者・建築工事業者が,土木一式工事・建築一式工事を施工するに際して,これに付随して土木一式工事・建築一式工事以外の工事を他の建設業者に請け負わせて施工する場合に,当該建設工事に関する建設業許可を受けていない建設業者に工事を施工させたこと
  • 建設業許可の有効期間が過ぎ,営業停止処分を受け,または,建設業許可が取り消された場合において,それらの事実が生ずるより前に締結した契約に基づき建設工事を施工する場合に,これらの事実が生じた後2週間以内にその事実を注文者に通知しなければならないという義務に違反して通知をしなかったこと
  • 経営状況分析・経営規模等評価に際して,必要な報告・資料提出を求められたのに対して,報告・資料提出をせず,または虚偽の報告・資料提出をしたこと
  • 国土交通大臣・都道府県知事が特に必要があると認めて業務,財産,工事施工の状況について報告を求めたのに,報告をせず,または虚偽の報告をしたこと
  • 中小企業庁長官が下請人の利益保護のため特に必要があると認めて取引に関して報告を求めたのに,報告をせず,または虚偽の報告をしたこと
  • 国土交通大臣・都道府県知事が特に必要があると認めて業務,財産,工事施工の状況について調査をするため,営業所等に立ち入り,帳簿書類等を検査するのに際して,その検査を拒み,妨げ,または忌避したこと
  • 中小企業庁長官が下請人の利益保護のため特に必要があると認めて,営業所等に立ち入り,帳簿書類等を検査するのに際して,その検査を拒み,妨げ,または忌避したこと

10万円以下の過料

  • 許可を受けた建設業を廃止したのにその廃業の日から30日以内に国土交通大臣・都道府県知事に対して廃業の届出をしなかったこと
  • 建設工事の請負契約に関する紛争の解決のために建設工事紛争審査会が実施する調停に出頭を求められた場合において,正当な理由がないのに出頭の要求に応じなかったこと
  • 店舗および建設工事の現場ごとに許可を受けた建設業の名称その他所定の事項を記載した標識を掲げる義務に違反して標識を掲げなかったこと
  • 建設業の許可を受けていないのに,許可を受けた建設業者であると明らかに誤認されるおそれのある表示をしたこと
  • 営業所ごとに営業に関する所定の事項を記載した帳簿を備える義務に違反して,帳簿を備えず,帳簿に記載せず,帳簿に虚偽の記載をし,帳簿を保存しなかったこと

法人の罰金

従業員が違反行為を行った場合,その従業員が所属する会社等の法人は,従業員とは別にさらに重い処罰を受けることとなります。

ある従業員が「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」とされる行為を行った場合,その従業員が所属する会社等の法人は,1億円以下の罰金の刑を科せられることとされているのです。

これらの行為は,建設業法が禁止する行為のうち,特に重大な違反行為であるということができるでしょう。

罰則の効果|欠格要件に該当することも

建設業法に違反して処罰を受けたとしても,たとえば罰金であれば支払ってしまえばそれでいいという考えが頭をよぎるかもしれません。しかし,そのような認識は甘いといったほうがいいでしょう。

懲役または罰金の刑に処せられた場合,すでに取得していた建設業の許可は,取り消される可能性が十分にあります。

また,許可が取り消されるだけでなく,刑罰を科せられたのち5年間は新たに建設業の許可を取得することはできません。建設業許可を取得するうえで定められている欠格事由に該当することとなるからです。

建設業法違反のペナルティは重大

建設業法の違反と罰則について注意しなければならないのは,単に刑罰を科せられてそれだけで終わりではなく,建設業許可が取り消され,かつ,将来5年間にわたって新たに許可が取得できなくなるおそれがあるという点です。

たとえば罰金であればお金を払ってしまえば終わりだと思われるかもしれませんが,それだけでは済まないということです。

また,過料の処分を受けた場合には,刑罰を科せられたことにはならないため,ただちに許可が取り消されることにはなりませんが,監督官庁の判断によっては違反の内容次第で許可が取り消される可能性はあります。

いずれにしても,建設業法に違反した場合のペナルティは重大であるということができます。建設業法の規定に違反することがないように十分に注意をして活動することが大切です。

すでに建設業法に違反してしまっていたら?

もしすでに建設業法に違反してしまっているということがあれば,隠してうやむやにしようとせず,すみやかに弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。

違反の事実を隠し通してなんとかうやむやにごまかしとおそうとしても,取締りをする監督官庁をごまかしとおすことは簡単ではありませんし,なにより発覚した場合のリスクが非常に大きなものとなってしまいます。 適切な対応方法は具体的な事案ごとに異なってくるため,弁護士などの専門家に具体的な状況を詳しく相談したうえで,アドバイスに沿って対応することをおすすめします。