海外にいる外国人を採用する|採用内定から入社までの流れ
日本企業にとって,海外にいる外国人を採用する必要はいつの時代も変わらずに存在します。もしかすると,時代の流れにより近年ますます海外にいる外国人を採用する機会が増えているかもしれません。
いまこの記事を読んでいるあなたも,これから海外にいる外国人を採用しようかと検討している,あるいは,もう具体的に誰を採用するかまでおおまかに決まってきてこれから手続きを進めようとしているという段階にあるかもしれません。
この記事は,海外にいる外国人を採用する場合にどのような流れで進めていけばいいのかを知りたいというあなたに向けて,採用内定から入社までの流れを簡単に解説しています。まずは採用内定から入社までの流れをおおざっぱにつかみたいという方におすすめです。
採用内定から入社までに必要な期間
海外にいる外国人を採用するにあたっては,手続きの中で就労ビザを取得することが必要となります。この就労ビザを取得するために必要な申請の準備をし始めてから申請結果が出るまでだいたいどれくらいかかるのでしょうか。
結論から言えば,この必要な期間がどれくらいであるのかは,場合によります。たとえば,雇用主となる企業の規模によっても変動しますし,その他の事情によっても変動することがあります。
一般的には,就労ビザの申請準備から申請結果が出るまでには,おおむね2~4か月程度の期間が必要となります。
このようなことから,採用内定から入社までに必要な期間は,最低でも1か月程度は見込んでおいたほうがよいでしょう。
採用内定から入社までの大まかな流れ
海外にいる外国人を採用するにあたって,採用の内定を決定してから実際に入社するまでの流れがどのようなものになるのかということは,採用側の企業にとって特に気になるところかと思われます。
海外にいる外国人を採用する流れは,おおまかに次のようになります。
- 就労ビザが取得できるかの確認
- 雇用契約書の取り交わし
- 就労ビザの申請
- 受入れの準備
- 入社後の手続
これらについて,順番に見ていきましょう。
就労ビザが取得できるかの確認
外国人の採用にあたっては就労ビザが必要
海外にいる外国人を採用するにあたっては,その外国人について就労ビザを取得することが必要となります。
就労ビザとは,簡単にいえば,外国人が日本国内に適法に滞在するために必要な資格だと考えてもらえれば分かりやすいかと思われます。
日本国籍を有しない外国人は,誰でも自由に日本国内に入国・滞在することができるわけではありません。あらかじめ日本国内に入国・滞在することに対する許可を得た場合に限って,日本国内に入国・滞在することができるのです。この許可を得るという作業が,一般に就労ビザの取得と言われているものです。
就労ビザの取得には一定の要件を満たす必要がある
どの外国人を採用するのか具体的な採用候補者が決定したら,その外国人本人が有している学歴や職歴などが必要な就労ビザを取得するための要件にあてはまっているかどうかを確認します。
外国人が日本国内で就労するために必要な就労ビザの種類は,その外国人に担当してもらう職種によって変わってきます。そのため,取得のための要件を満たしているかの判断をするにあたっては,その外国人にどのような職種を担当してもらう予定なのかが結果に影響することとなります。その外国人にどのような職種を担当してもらう予定なのかをまずはっきりさせるようにしましょう。
また,外国人が担当する職務内容が入管法の規定する各種類の就労ビザのいずれかに該当していたら,それだけで就労ビザを取得できるのではないのかと思われるかもしれません。しかし,実際にはそれだけでは就労ビザを取得することはできません。本人が有している学歴や職歴が,必要なビザに応じて定められた要件を満たしていない場合には,そのビザを取得することはできないのです。
入管法においては,いくつかの種類に分けて就労ビザが規定されており,ビザの種類に応じて取得のために必須とされる要件が詳細に定められています。
たとえば,大学卒業相当などの一定の学歴や,同一職種内での一定年数以上の職歴などが取得の要件とされているなどします。この学歴・職歴の要件は,ビザの種類などによって異なるため,どの種類のビザが必要になるのかをよく見極めたうえで要件を満たすのかどうか判断していくことになります。
外国人本人の学歴や職歴などを確認するにあたっては,履歴書のほか,卒業した大学・大学院の卒業証明書を確認するなどの方法によります。
就労ビザが取得できるか否かの確認が重要
このように,採用予定の外国人について就労ビザが取得できるか否かは,その外国人を採用して日本国内に招いて働いてもらううえでは極めて重要なこととなります。
必要な要件を満たさないことを理由として就労のために必要な種類の就労ビザを取得できなかった場合には,その外国人を採用して日本国内に招いて働いてもらうことはできないということになります。せっかく採用したい外国人が見つかっているのに就労ビザを取得することができないから日本国内に招聘することができないというのではどうしようもありません。採用のためのさまざまな手間が無駄になってしまうということにもなります。
就労ビザを取得できるかどうかの確認は,外国人を採用して日本国内で働いてもらうことができるのかどうかに関わる重要な作業だということになります。
労働契約の締結と契約書の取り交わし
しっかりと確認して就労ビザを取得できる見込みがあると判断することができたら,そのあとに初めて,外国人本人と直接労働条件について話し合って労働契約(雇用契約)を締結します。
労働契約を締結するよりも前に就労ビザを取得できる見込みがあるという判断をしなければならないというこの順番が重要です。
労働契約を締結するにあたっては,特に留意するべき点が二つあります。
契約書を作成する
まず,労働契約を締結するにあたっては,単に口頭で口約束をするだけではなく,契約書を作成して書面による形で契約を締結することが重要です。
会話の中での口約束だけであれば,後日どのような約束がなされたのかをめぐって認識の相違が発生し,無用なトラブルを生じることになりかねません。
口約束だけでなく契約書を作成することにより,採用後にどのような労働条件で働くかについての合意を目に見える形で残すことができ,後日なんらかのトラブルが発生した場合においても実際にどのような合意がなされていたのかを証明することができます。
労働契約を締結するにあたっては,必ず契約書を作成するようにしましょう。
また,契約書には,基本的な事項を記載するだけではなく,採用に関して外国人との間で成立した合意をもれなくすべて記載するようにするようにしましょう。
日本語に加えて外国語の翻訳文も用意する
労働契約を締結するにあたって労働契約書を作成するということは当然のこととして行う企業も多いことかと思われます。
これに加えて,外国人を雇用するということがらの性質上,可能な限りでかまわないので,日本語で作成した雇用契約書とともに,その外国人が理解できる母国語や英語などの外国語で契約書の翻訳文を作成することも重要です。
日本語・外国語の両方の契約書を作成して外国人に交付しておけば,外国人が契約内容を正確に理解でき,後日理解の不足からくる紛争が生じることを避けることができます。外国語の翻訳文を交付しておけば外国人の側からあとからそんな契約内容は知らなかったと弁解されるということを防ぐことができるということも期待できます。
ぜひ日本語・外国語の両方の契約書を作成し,ともに外国人に交付しておくようにしましょう。
就労ビザの申請
就労ビザが取得できるかを確認し,契約書を作成して労働契約を締結したら,次はいよいよ就労ビザを申請します。
就労ビザの取得には手続きが必要
就労ビザは,正確には「在留資格認定証明書」といいます。就労ビザを取得するとは,この在留資格認定証明書の交付を求めて,出入国在留管理庁に対して申請をする手続きのことをいうのです。
雇入れをする会社の規模その他の事情によって,申請の際に必要となる提出書類は異なってきます。
就労ビザの申請は行政書士などに代行してもらう
この就労ビザの申請は,もちろん雇入れをする会社が自ら行うこともできますが,一般的には,行政書士または弁護士に依頼して申請手続を代行してもらうことが多く行われています。
行政書士等の専門家に手続きの代行を依頼するメリットは,なにより企業が負担を負うことなく迅速かつ正確に手続きを完了することができるという点にあります。
申請のために必要な書類が何かを判断することや必要となる書類を実際に集めて用意するという作業はなかなか手間がかかるものであり,会社が自ら行おうとしても事務的な負担が重く,難しい作業となります。行政書士等の専門家であれば,手続きの詳細を熟知しており,企業が自ら手続きを行うよりももっとスムーズに手続きをこなすことが可能です。
このようなことから,就労ビザの申請は,行政書士等に依頼して手続きを代行してもらうことが一般的となっています。
受入れの準備
就労ビザを取得することができ,入社して勤務してもらうことが決まったら,必要に応じて受入れのための準備を整えます。
たとえば,外国人本人が,母国等の日本大使館等で行うこととなる査証申請について,具体的にどのようにするべきかを教えることなどが考えられます。
外国人本人にとってみれば,異国の地に渡って働こうというのですから,さまざまな点で負担が大きく不安なことも多くあるものかと思われます。この段階で雇入れ企業が採用する外国人に対し手厚くフォローをすることが,採用企業と就労する外国人との間の信頼関係をより密にして入社後の円滑な就労を実現することにつながります。ぜひ積極的に手厚いフォローを行うように心がけてみてください。
入社後の手続
無事受入れの手続きが済み,外国人が入社できたとしても,まだ終わりではありません。入社後にもいくつかの手続きが必要です。
住民登録
最初に行うべきことは,居住地における住民登録の指導です。
外国人従業員がどこに住むのかが決まったら,その居住地の住所を管轄する市区町村の役所において,外国人本人が住民登録を行います。この住民登録を行うよう指導し,必要に応じて手伝うという作業は欠かせません。
住民登録をすることにより,公的なサービスを受けることができるとともに,給与振込等に必要な銀行口座の開設もできるようになります。
ぜひ住民登録はしっかりと行うようにしましょう。
在留期間更新許可申請の手続き
また,入社後は,在留期間を更新するため,在留期間更新許可申請の手続きを行う必要がある場合もあります。この手続きは,文字どおり,在留期間を更新するものです。当初の許可には在留期間が定められており,一定の期間ごとにそれを更新しなければ外国人の滞在が不法滞在になってしまうという危険があります。
在留期間更新許可申請は,当初許可されていた在留期間が満了するよりも前に行う必要があります。在留期間が満了してしまうとそれ以降の滞在は不法滞在となってしまうことから,在留期間の更新手続きは重要な手続きであるということができます。
雇入れ企業は,採用した外国人の在留期間をしっかりと把握するようにすることが大切になります。
採用にあたっては信頼関係の構築が大切
海外にいる外国人を採用するための手続きと流れは,おおむね以上のようなものとなります。
事務的な手続きとしては,このようなものを淡々とこなしていけばいいということになりますが,単に事務的な手続きをこなすだけでは十分とはいえません。これと同時に雇入れ企業にとって大切なことが,就労する外国人との間でしっかりとした信頼関係を構築するということなのです。
就労する外国人も,当然ながらひとりの人間です。日本人と同じようにさまざまな機会に不安を感じることもあるはずです。そのような外国人の気持ちを十分に考慮しつつ,手続きを円滑に進めるうえでやり取りを密にしながら積極的にフォローをしていくことで,入社前の段階から信頼関係を構築していくことができることでしょう。
信頼関係の構築は,雇入れ企業にとってもメリットがあることです。
しっかりとした信頼関係が構築されていれば,採用後の外国人の働きぶりは信頼関係がない場合とは比較にならないほどしっかりとしたものとなりますし,またトラブルの発生も少なくなります。 外国人の採用にあたっては,事務手続きをこなすと同時に,信頼関係をうまく構築していくという視点も忘れずに,意識してコミュニケーションを図るようにするとよいでしょう。
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